FAQ 痛みQ&A

疾患・症状

五十肩

どのような疾患?
肩関節の炎症による痛みと肩を包む袋(関節包)の線維化による硬さが起こります。
疾患・症状

ワクチン接種後の肩の痛み SIRVA

どのような疾患?
肩へのワクチン注射後に生じる肩関節障害のことです。
疾患・症状

石灰沈着性腱板炎

どのような疾患?
肩関節を取り巻く腱板に石灰が沈着し、その周囲に炎症が起きた状態です。
疾患・症状

変形性膝関節症

どのような疾患?
膝関節の間の軟骨がすり減って、骨と骨がぶつかり合うことで、痛みが生じたり、関節が変形したりする疾患です。
疾患・症状

ジャンパー膝

どのような疾患?
ジャンパー膝は膝皿の下に痛みが生じる疾患で、正式名称は膝蓋腱炎です。
疾患・症状

アキレス腱炎

どのような疾患?
かかと後ろのアキレス腱に炎症が起きた状態です。
疾患・症状

ヘバーデン結節

どのような疾患?
ひとさし指~小指(2~5指)の第1関節に見られる変形性関節症です。

五十肩

どのような疾患?

五十肩の正式名称は肩関節周囲炎です。原因は、滑膜の炎症とそれに続いて起こる関節包の線維化です。炎症が起きてしまうことで痛みが生じ、関節包という肩の袋が硬くなることで動きにくくなってしまうのが五十肩の特徴的な症状です。

症状

特徴的な症状は以下の通りです。

  • ・夜間の痛みにより眠れない
  • ・前または横から腕を上げられない
  • ・ズボンの後ろポケットや背中をさわるのがツライ

重症の場合は1年以上症状が続くことも珍しくありません。

重症の場合、ステロイド注射、鎮痛薬(ロキソニンなど)、湿布、マッサージ、ハリなどの治療では改善しないことがあります。最近の研究で、五十肩の患者さんの関節包には余分な異常血管(モヤモヤ血管)が出来ていることが分かってきました。当院では、この異常なモヤモヤ血管を治療対象とした血管内カテーテル治療を行っています。今までの治療で効果がない場合は、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

当院の経験症例① 60代女性

2021年に入ってから、何となく右肩の痛みが出てきました。徐々に腕が上げにくくなり、夜だけでなく日中も痛みが出るようになりました。車の運転中に駐車券を取るのも困難になり、日常生活にかなり支障が出るようになりました。湿布やリハビリでは改善せず、痛み止めの飲み薬を続けていた影響で、胃腸の調子も悪くなってしまいました。
当院を受診され、超音波検査でモヤモヤ血管による五十肩の診断となりカテーテル治療を行いました。

右肩カテーテル治療の血管造影像です。治療前はモヤモヤ血管(→)が明らかですが、治療後はモヤモヤ血管が消失しています。

治療後3週間で徐々に夜間痛が軽減し、痛み止めを飲まなくても過ごせるようになったので満足されています。腕の可動域制限はまだありますが、今後徐々に改善が期待できます。
カテーテル治療後3か月経過し、腕は元の状態まで動かせるようになりました。手を頭の高さまで挙げても痛みはほとんどなくなり、洗濯物が楽に干せるようになりました。鎮痛薬内服や湿布も使わずに日常生活を送れるようになり、満足され卒業となりました。

当院の経験症例② 60代男性

受診の約6か月前、手を枕代わりにしようと後頭部に腕を持っていった時、右肩に強い痛みが出ました。その後、夜に寝返りをすると痛みで目が覚めたり、後ろポケットに手を入れる動作で痛みが出るようになりました。
当院で超音波検査を行うと、右肩にモヤモヤ血管が見られました。

右肩:肩甲下筋の内部にモヤモヤ血管()が多数確認できます。
左肩:痛みがないので、異常は見られませんでした。

右肩カテーテル治療の血管造影像です。
治療前:モヤモヤ血管()が広範囲に見られます。
治療後:モヤモヤ血管が消失()しています。

後日、カテーテル治療を行いました。血管の曲がりは強かったですが、問題なく終了しています。カテーテル治療の2~3日後から症状の改善が見られ、1か月かけて夜間の痛みは徐々に改善し、眠れるようになってきました。腕の動きによる痛みも徐々に改善傾向です。
加入している医療保険から給付金もあったと患者様は満足されています。
カテーテル治療後3か月経過し、腕を動かしたときの痛みは消失しました。夜間の寝返りも問題なくできるようになり、日常生活に支障がなくなりました。順調な経過で無事卒業されました。

ワクチン接種後の肩の痛み SIRVA

どのような疾患?

SIRVA(シルバ)はあまり聞きなれない病名です。
Shoulder Injury Related to Vaccine Administrationの頭文字をつなげた略称で、肩へのワクチン注射後に生じる肩関節障害のことです。コロナやインフルエンザなどワクチンの種類を問わず、ワクチンが肩の滑液包(関節の袋)に注入されたケースでは、長期の炎症反応を引き起こすことがあります(1)。最近では、コロナワクチン接種後に肩の長引く痛みに悩んでいる人が報告されるようになりました。

症状

ワクチン接種後、肩の痛みや筋肉痛などの症状が2~3日出ることは通常よく見られます。これらの症状が2~3日では治まらず、2週間~数か月間持続する場合はSIRVAの可能性があります。程度が強くなると腕のだるさ・動かしにくさを伴います。多くの場合、安静・消炎鎮痛剤の内服・ステロイド注射で改善しますが(2)、数か月も続く痛みや可動域制限を伴う方がいます。症状はいわゆる五十肩(肩関節周囲炎)と似ています。

[参考文献]
(1) Atanasoff S, et al. Shoulder injury related to vaccine administration (SIRVA). Vaccine. 2010;28(51):8049–52. https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2010.10.005.
(2) Batra S, Page B. Shoulder injury related to vaccine administration: case series of an emerging occupational health concern. Workplace Health Saf. 2021;69(2):68–72. https://doi.org/10.1177/2165079920952765

当院の経験症例① 50代女性

2021年7月に1回目、8月に2回目のコロナワクチン接種を受けました。2回とも左肩に接種を受けています。2回目の接種後、左肩の痛みが出てきましたが、2~3日どころか2週間経っても改善しません。1か月過ぎても左肩の痛みは改善せず、動かしにくさも出てきました。他院で痛みを改善させるためのステロイド注射を3回受けましたが、症状は改善しませんでした。当院受診時は、夜間痛のため眠ることができず、左腕を動かすのも困難な状態でした。左腕を横から上に挙げようとしても、肩の高さまで挙げることができず、衣服の着脱が困難になっていました。
当院で左肩の超音波検査を行うと、左肩の肩甲下筋内にモヤモヤ血管が見られました。
エピソード、症状、超音波所見からSIRVAと診断し、後日カテーテル治療を行いました。

左肩:肩甲下筋の中に、通常は見られない異常な血流(モヤモヤ血管↑)が見られました。
①②治療前:モヤモヤ血管(〇→)が見られます。
①②治療後:モヤモヤ血管は消失(〇→)しています。

カテーテル治療後、2週間かけて夜間痛が消失しました。治療後1か月かけて起床時や動作時の痛みが徐々に改善し、腕も徐々に挙がるようになってきました。
五十肩と異なるのは20~30代の若年層にも見られる点です。当院ではSIRVAに生じたモヤモヤ血管に対して注射やカテーテル治療を行っています。ワクチン接種後の長引く痛みにお悩みの患者さんは、専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

後日、上記治療を卒業された患者様から感想を頂きました。
このような有難いお言葉を頂けるとがんばって続けていこうと思えます。こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。

当院の経験症例② 40代女性

2021年8月、2回目のコロナワクチン接種を左肩に行いました。1回目のワクチン接種後とは経過が異なり、接種後から左肩の痛みが治まりません。数週間経過しても改善なく、より悪化したような印象でした。髪の毛を結ぶ、衣服着脱、車のシートベルト装着や後部座席の物を取る動作が徐々にきつくなりました。夜間眠っていても痛みで目覚めるようになり、2022年1月に当院を受診されました。
診察時、左肩は肩の高さ水平まで挙げることが困難な状態でした。 以下、カテーテル治療前の超音波検査とMRI検査です。

左肩MRIで腱板疎部に水が溜まっているのが確認できました。経過からもワクチン接種後に長引く痛み(SIRVA)として矛盾せず、カテーテル治療を行いました。

カテーテル治療後、約1か月はほとんど変化がありませんでした。1か月を過ぎた頃から夜間痛が徐々に軽減し、眠れるようになってきました。2か月を過ぎた頃から腕を動かすときの痛みが減ってきて、衣服着脱ができるようになってきました。4か月経過した頃、ほとんど痛みはなくなり、腕の可動域も拡がって両手を挙げられるようになりました。
カテーテル治療後の変化には個人差があります。治療後1か月以内に速やかに改善する人もいれば、1か月過ぎた頃から遅れて改善する人もいます。いずれにしても想定内の経過です。
※ご本人が症状の経過を詳細に記していただいたので、以下、原文のまま掲載します。

石灰沈着性腱板炎

どのような疾患?

腱板とは肩関節を取り巻く4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の腱が合わさったものです。この腱板に石灰が沈着し、その周囲に炎症が起きた状態を石灰沈着性腱板炎と呼びます。原因はまだ明らかにされていません。
右図のように、肩関節の腱板に石灰(リン酸カルシウム)の結晶が沈着して、急性または慢性の炎症を引き起こす病態で、五十肩(肩関節周囲炎)の症状とよく似ています。
人口の2.7%に発症し(1)、30~50代に好発するとされています(2-4)。また男性よりも女性に多く(1,2)、10~20%は両側性に見られるとされています(3)。
症状は一般的に自然に治まるとされていますが、一部の症例では症状が持続することもあります。
治療法は急性期と慢性期で異なります。
急性期では激痛を和らげるために鎮痛薬の内服、局所麻酔薬やステロイドの注射、石灰の穿刺吸引が一般的に行われています。慢性期では石灰の外科的摘出が行われることもあります。

症状

急性期の症状は五十肩とよく似ています。

  • ・安静時の痛み
  • ・夜間、眠れないほどの激痛
  • ・患部を押した時に痛い(圧痛)
  • ・激痛のため肩や腕を動かせない

慢性期の症状は安静時の痛みは軽く、動かしたときの痛み(=動作時痛)がメインになります。

治療

急性期は安静時・夜間・動作時の激痛を緩和するのが主な目的になります。肩関節の袋(肩峰下滑液包)を狙った局所麻酔薬(キシロカイン)やステロイドの注射、NSAIDs(非ステロイド系炎症薬:ロキソニンなど)の内服などで治療します。
数か月~数年に及び症状が持続する慢性期は石灰を除去する手術が行われることもあります。

最近では石灰の周囲にできた異常新生血管(=モヤモヤ血管)を治療対象としたカテーテル治療が行われるようになってきました。石灰があっても痛くない人はいますが、慢性的な痛みとなっている場合、石灰の周囲にモヤモヤ血管ができ、 炎症が持続していると考えられます。石灰が溜まっているため肩の激痛が長引いている、かつ今までの治療で効果がない場合は、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

[参考文献]
(1)Bosworth BM. JAMA. 1941;116(22):2477–2482.
(2)DePalma AF, et al. Clin Orthop. 1961; 20:61–72.
(3)Ogon P, et al. Arthritis Rheum. 2009;60(10):2978–2984.
(4)Welfling J, et al. Rev Rhum Mal Osteoartic. 1965;32(6):325–334

当院の経験症例① 70代女性

1年以上続く右肩の痛みで当院を受診されました。夜間の激痛で眠れず、腕を動かすときにも痛みが生じていました。前医では五十肩と診断され、ヒアルロン酸注射や鎮痛薬の内服をしていましたが痛みは改善しません。マッサージでも良くなりません。
当院の超音波では右肩の棘上筋腱に重なる石灰が見られ、肩関節周囲には多数のモヤモヤ血管が見られました。

費用面での懸念はありましたが、何よりも夜間の激痛で眠れないことに困っており、カテーテル治療を受けることになりました。

治療によりモヤモヤ血管は速やかに消失しました。治療後1か月の時点で元の痛みが半分くらいになり、夜間の激痛はかなり改善し眠れるようになりました。2か月経過する頃には鎮痛薬を内服する頻度もかなり減り、 鎮痛薬を内服せずに過ごせることができるようになりました。腕を動かせる範囲も広くなり、動かした時も以前ほどの痛みは感じなくなっています。加入していた保険会社からの給付金もあり大変喜ばれています。

変形性膝関節症

どのような疾患?

膝関節の骨と骨の間には軟骨があります。変形性膝関節症は、膝関節の間の軟骨がすり減って、骨と骨がぶつかり合うことで、痛みが生じたり、関節が変形したりする疾患です。この状態が長く続くと関節の隙間が狭くなり、骨がボコボコとしたいびつな形になっていきます。
変形性膝関節症は、全世界で数百万人が罹患しており、痛みや可動域の制限を伴い、生活の質が著しく低下します。初期治療としては、鎮痛薬、湿布、理学療法などの保存的治療が行われます。症状が重くなると、ステロイドやヒアルロン酸などの関節内注射が行われます。これらの処置でも改善しない重症の場合は、手術(人工膝関節置換術など)が行われます。
↓膝関節のX線画像
X線画像
KL分類(良1 ⇔ 4悪)
KL1:⇒膝関節のすき間にほとんど変化はありませんが、骨にわずかな変形が見られます。
KL2:⇒膝関節がわずかに狭くなり(50%未満)、骨棘(こつきょく:骨のとげ)ができています。
KL3:⇒膝関節のすき間がさらに狭くなり(50~75%程度)、骨棘がいくつも見られます。
KL4:⇒膝関節のすき間がなくなり、骨と骨がくっつき、強い変形が見られます。骨棘も多いです。
   *変形の進行により、骨硬化が見られます。
KL4まで進攻した場合、骨の内部まで異常が見られることが多く、最終的には手術(人工膝関節置換術など)が推奨されます。

症状

外側よりも内側に痛みが出ることが多いです。

  • ・歩き始め、立ち上がり時に痛い
  • ・階段の上り下り(特に下り)で痛い
  • ・曲げ伸ばしで痛い → しゃがめない、正座できない
  • ・長時間歩行や走る時に痛い

治療

前述の保存的治療(鎮痛薬・湿布など)や手術(人工膝関節置換術など)が一般的な治療法です。
最新の考え方では、痛みは骨同士がぶつかる機械的なものだけではなく、異常新生血管(=モヤモヤ血管)によるものが考えられています。モヤモヤ血管の周りには痛みを伝える異常な神経も併せて増えているため、モヤモヤ血管を治療しないと長引く痛みはなかなか改善しません(1,2)。
当院では、膝関節周囲に生じたモヤモヤ血管を治療対象とした血管内カテーテルを行っています。膝の痛みへのカテーテル治療は、2021年10月にアメリカFDA(日本の厚生労働省にあたる)で、限定的に認可されました。日本でも保険収載への追い風となってほしいですが、日本で保険診療が認可されるまでは、まだ数年以上かかる見込みです。

[参考文献]
(1) Okuno Y, et al. J Vasc Interv Radiol. 2017; 28: 995-1002.
(2) Pooya Torkian et al. Orthop J Sports Med. 2021 Jul 14;9(7):23259671211021356.

当院の経験症例① 60代男性

5~6年前から両膝に痛みが生じました。階段を降りる時、椅子からの立ち上がり時に痛みが生じていましたが、他院のレントゲン検査では異常を指摘されず、原因が分からないまま長引く痛みに悩まされていました。
当院のレントゲン検査でも骨の変形はほとんど見られませんでしたが、診察を行うと特に右膝内側に圧痛(押したときの痛み)が見られ、痛みのある部位をエコーで調べると、膝関節周囲にモヤモヤ血管が確認できました。

変形性膝関節症のエコー所見

大腿骨内側の表面に赤い信号が見えます。これ()がモヤモヤ血管で、レントゲンでは見えない異常所見です。痛みの強い右膝の方がモヤモヤ血管は目立ちました。

カテーテル治療により症状の改善が見込めたので、日帰り手術を行いました。
上記画像のように、レントゲンで骨に異常は見られませんでしたが、右膝内側の関節のすき間にモヤモヤ血管が確認できました。治療を行うとモヤモヤ血管は速やかに消失しました。
カテーテル治療後、1か月半経った頃から改善が見られ、元の痛みの10分の1程度になりました。歩くときに違和感はあるものの、以前のような痛みを感じなくなり、日常生活が楽になったと満足されています。
このようにレントゲンで異常はない場合でも、超音波でモヤモヤ血管が確認できれば、カテーテル治療により痛みが改善する可能性があります。

当院での経験症例② 70代女性

5~6年前からの両膝の痛みで受診されました。以前、整形外科で変形性膝関節症の診断をされ、注射、湿布、リハビリなどの治療を受けていましたが痛みは改善しません。整体・マッサージなども受けましたが、痛みはやはり改善しません。椅子からの立ち上がり、平地歩行で痛みがあり、夜間や起床時にも痛みがあったため、日常生活に大きな負担となっていました。
当院の診察やレントゲンでは両膝とも中等度以上の変形(KL3)が見られ、超音波検査でも痛みの部位に一致したモヤモヤ血管が見られました。MRI検査も併せて行うと、右膝の関節面や骨内にも炎症や浮腫が見られました。

比較的変形が進行した変形性膝関節症です。骨の中に異常が見られる場合は、難しい痛みのことが多いです。一方、関節の周囲に見られるモヤモヤ血管は治療できる可能性があったのでカテーテル治療を行いました。

両膝の内側と外側に多数のモヤモヤ血管が見られましたが、いずれも治療により速やかに消失しました。両膝の治療を同時に行い、約1時間の安静後、歩いて帰宅されました。
治療の2~3日後から痛みが改善し始めました。両膝とも1か月経過する頃には元の痛みの半分程度になりました。夜間痛で目覚めることがなくなり、以前より歩行がスムーズになったと喜ばれています。少しずつ効果が出てくる治療なので、今後も改善が見込まれます。このように変形が強い場合でも、現在の痛みより改善する可能性が十分にあります。

ジャンパー膝

どのような疾患?

ジャンパー膝は膝皿の下に痛みが生じる疾患で、正式名称は膝蓋腱炎です。
オーバーユース(使いすぎ)によるスポーツ障害で、スポーツ活動の盛んな10~20代に多く見られます。バスケットボールやバレーボールなどジャンプの多いスポーツだけでなく、サッカーや陸上競技の選手にも見られることから、ジャンプや走る動作の繰り返しにより、膝伸展機構(特に膝蓋腱)に負荷がかかり、痛みが生じるとされています。トップアスリートにおいては30~40%と高い有病率が報告されており(1-3)、また再発を繰り返して長期間離脱になる難治例も少なくありません。

症状

スポーツによる膝の慢性痛は痛みの程度によって重症度が分類されます。

  • ・軽症:スポーツはできるが、プレーの後に痛む。
  • ・中等症:スポーツはできるが、プレーの途中や後に痛む。
  • ・重症:常に痛み、プレーに支障がある。
  • ・最重症:腱や靭帯が切れてしまう…

ジャンパー膝になっても軽症~中等症であればスポーツは続けられますが、重症化を防ぐため、しばらく練習量を減らす必要があります。

治療

一般的には保存的治療(安静・アイシング・理学療法・鎮痛内服薬など)が行われます。
半年以上、保存的治療で改善しない場合は手術(腱切除など)が行われることもありますが、他の治療法に対する優位性の報告が少ないため、慎重な検討が必要です。

一方、ジャンパー膝のような腱炎・腱付着部炎では、痛みのある部位に異常新生血管(モヤモヤ血管)が生じることが分かっています(4,5)。当院ではジャンパー膝に生じたモヤモヤ血管を治療対象とした血管内カテーテル治療を行っています。
スポーツによる長引く痛みでお悩みの患者さんは、専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

[参考文献]
(1)Am J Sports Med,39(9):1984-1988, 2011.
(2)Am J Sports Med. 24(5):676-683, 1996.
(3)Am J Sports Med. 33(4):561-567, 2005.
(4)Am J Sports Med. 36:1813-1820, 2008.
(5)J Vasc Interv Radiol 2013; 24:787–792

当院の経験症例① 16歳男性

サッカー歴8年になる高校生です。約8か月前から左膝下に痛みを感じ始めました。高校入学後にサッカーの練習がハードになり、そのまま練習を続けていると徐々に痛みが強くなってきました。特に練習後に痛みが強く、練習中は時々痛みが出るという状態です(→前述の分類からは中等症)。これまで注射、湿布、理学療法など様々な治療を行い、だましだまし練習を続けている状況でしたが、なかなか改善が見られず当院を受診されました。

診察では左膝下を押すと痛みがあり、痛みの部位を超音波で確認すると、膝蓋腱が明らかに腫れていました。

超音波でモヤモヤ血管が確認でき、カテーテル治療により改善が見込めたので、日帰り手術を行いました。

膝蓋骨の下端(膝蓋腱の付着部)にモヤモヤ血管が確認できました。病変部までカテーテルを進めて薬を流すと、速やかにモヤモヤ血管は消失しました。治療室に入室→準備→治療→止血→退室まで約1時間で終え、合併症がないことを確認して帰宅となりました。

治療効果は比較的速やかに見られました。1か月経過し、日常生活での痛みはほとんどなくなりました。2か月経過し、軽いシュートやパスの練習では痛みは出ませんでした。3か月経過する頃には痛みをほとんど感じなくなり、元の7~8割程度のサッカーができるようになりました。連日ハードな練習をすると軽い痛みが出ることはあるものの、1日休むと痛みは治まる状態まで改善しています。膝蓋腱の腫れが完全に治まるまでは、数か月以上かかることがほとんどなので、この時期に痛みが出るようなハードトレーニングは避ける必要があります。現在は専属の理学療法士と連携して膝への負担を抑えながら、次の大会へ向けて練習に励んでいます。

ジャンパー膝のようなオーバーユース(使いすぎ)によるスポーツ障害は、従来の治療だけでは長引く痛みが改善しないこともあります。モヤモヤ血管を治療することでスポーツ復帰が可能な方もいらっしゃるので、今後もスポーツを続けていきたい方は是非検討されてみて下さい。

アキレス腱炎

アキレス腱炎

どのような疾患?

ふくらはぎの筋肉は腓腹筋とヒラメ筋の2つから成り立っています。この2つの筋肉の腱が合流したもの=アキレス腱で踵骨(かかとの骨)にくっつきます。このアキレス腱に炎症が生じた状態をアキレス腱炎と呼びます。アキレス腱炎は、踵骨にくっつく腱付着部(insertion)とそれよりやや頭側の腱中央部(midportion)に生じやすいです。全体の3分の1が腱付着部(insertion)に生じるとされています(1)。
アキレス腱炎はランニングの強度やトレーニング時間が急に増えると起こりやすくなります。また、テニスやバスケットボールなどスポーツをする中高年の方にもよく見られます。一般市民での発症率は年間1,000人中2人(0.2%)(2)、レクリエーションレベルのランナーでは1,000人中50人(5%)であり(3)、スポーツなどによる慢性刺激・負荷が一因と考えられています。
アキレス腱炎の多くはセルフケアで改善します。しかし、慢性化したアキレス腱炎は保存療法(薬物療法や理学療法など)でなかなか改善しないことがあります。保存療法を10年行った後でも、4分の1の患者で症状が残っているとの報告もあります(4)。

症状

アキレス腱炎の主な症状は痛みです。通常、ランニングなどのスポーツをした後に、下腿の後ろやかかとの上に軽い痛みとして始まります。長時間のランニング、短距離走、階段昇降など負担の大きい動作の後は、より強い痛みを感じることがあります。
また、(特に朝)押したときの痛み(=圧痛)やこわばりを感じることがあります。

症状

主に画像検査でアキレス腱の評価を行います。
X線:アキレス腱そのものは見えませんが、アキレス腱付着部の骨棘(骨のとげ)や腱内の石灰化を評価できます。
超音波(エコー):アキレス腱炎の場合、腱そのものが腫(は)れて、アキレス腱の内部や周辺に異常血流(モヤモヤ血管)を確認できます。また、アキレス腱の動きをリアルタイムで評価できます。
MRI:アキレス腱の腫脹、軟部組織の炎症など、より詳細な情報が得られます。また、踵骨(かかとの骨)の中にも炎症が及んでいないか確認することもできます。

治療

一般的には痛みを抑える薬物療法、理学療法が行われています。理学療法ではアキレス腱を伸ばすストレッチが効果的です。足台や階段を使って、アキレス腱をゆっくり伸ばす方法が推奨されています(我慢できる程度の痛みで行うことが大事です)。
一方、アキレス腱炎のような腱炎・腱付着部炎では、痛みのある部位に異常新生血管(モヤモヤ血管)が生じることが分かっています(5)。当院ではアキレス腱炎に生じたモヤモヤ血管を治療対象とした血管内カテーテル治療を行っています。アキレス腱炎による長引く痛みでお悩みの患者さんは、専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

[参考文献]
(1) Chimenti RL, et al. Foot Ankle Int 2017;38:1160-9.
(2) de Jonge S, et al. Br J Sports Med 2011;45:1026-8.
(3) Lagas IF, et al. J Sci Med Sport 2020;23:448-52.
(4) Johannsen F, et al. BMJ Open Sport Exerc Med 2018;4:e000415.
(5)Yuji Okuno, et al. J Vasc Interv Radiol 2013; 24:787–792

当院の経験症例① 33歳男性

沖縄県を代表するマラソンのトップランナーです。約7年前からアキレス腱に痛みを感じ始めました。集中して練習すると痛みが悪化し、しばらく休息すると痛みが改善する、痛みに波のある状態が数年続いていました。約1年前から練習強度を高めると、それに併せて痛みが増悪し、練習に集中できない状態が続きました。注射、体外衝撃波、マッサージなど様々な治療を行ってきましたが、十分な改善が得られなかったため、当院を受診されました。診察ではアキレス腱の腱付着部(insertion)や腱中央部(midportion)に圧痛が見られ、超音波(エコー)検査を行うと、痛みの部位に一致した異常信号(モヤモヤ血管)が確認できました。MRI検査でも同様の所見でした。

アキレス腱炎

アキレス腱炎

これまでに様々な治療を受けていますが、十分な効果が得られておらず、運動器カテーテル治療を行うことになりました。

アキレス腱炎

非常に速やかに治療効果が表れました。カテーテル治療終了の時点で普段感じている痛みや圧痛がほとんど消失しました。2週間経過し、普段の6割程度でマラソン練習を開始しましたが、練習後も痛みが悪化することはありませんでした。4か月経過し、治療前と同程度の練習(20km/日×週5~6日)を行っていますが、以前のような痛みが生じることはありません。元々の負荷が大きいため、時折痛みを生じることはありますが、セルフケアを行うことで対応できています。運動器カテーテル治療により、トップアスリートにも十分な治療効果が得られています。

ヘバーデン結節

どのような疾患?

ヘバーデン結節はひとさし指~小指(2~5指)の第1関節に見られる変形性関節症です。
1802年にイギリスのWilliam Heberdenが最初に報告したので、ヘバーデン結節と呼ばれています。
40歳を過ぎた女性に好発します。見た目は第1関節が腫れ、押したときの痛み(圧痛)や動かした時の痛みを訴えることが一般的です。
手指に多発する関節痛のため、関節リウマチを心配して受診する患者さんが多くいます。ヘバーデン結節は関節軟骨の変性が原因ですが関節リウマチは自己免疫反応により生じた滑膜炎(かつまくえん)によって、関節が破壊されることが原因です。
症状は似ていることもありますが、根本的な原因は異なります。
なお、関節リウマチは第2関節や指の付け根である中手関節(MP関節)に発症することが一般的です。
ヘバーデン結節のX線(レントゲン)画像と見た目(1)
X線画像

症状

一般的には第1関節の痛み、赤くなる、腫れ、曲がりが見られます。
また曲げ伸ばしや物が当たったときの痛みもよく見られます。関節の変形のため、動きも悪くなります。
家事、書字、パソコン作業など日常生活に様々な支障が生じます。

ヘバーデン結節の原因は?

ヘバーデン結節の原因はまだ明らかになっていません。
以下のものがリスクファクターとして考えられています。

①年齢
1986年、症状のない方も含めた一般人口3,645人(男性1,385人、女性2,260人)における
ヘバーデン結節の発生頻度調査が行われました(2)。
一般人口全体における平均発生頻度は31.0%
(30歳代10.6%、40歳代20.7%、50歳代28.6%、60歳代35.3%、70歳代50.5%、80歳代59.1%)でした。
年齢を重ねるにつれ、ヘバーデン結節の発生頻度はほぼ正比例的に増加することが分かっています。

②性別
日常診療においては、女性の有症状の受診者が圧倒的に多いです(3,4)。

③職種
手指をよく使う職種に比較的発生率が高いとされています。

ヘバーデン結節の治療

一般的な治療は、保存的治療(手術ではない方法)として消炎鎮痛薬(湿布や痛み止めの飲み薬)、局所のテーピングなどがあります。
急性期では少量の関節内ステロイド注射も有効です。
外固定やテーピングなどの保存的治療によって3 か月程度で症状が軽快することが一般的です。
保存的治療で痛みが改善しない場合は手術の選択肢もあります。関節のコブを切除する手術や関節を固定する手術があります。

一般的な治療で治らない場合は?

一般的な治療法で改善されない場合、新しい治療法を検討してもよいと思います。
最近では変形性関節症の関節周囲には余計な異常血管(モヤモヤ血管)が増えていて、
腫れや炎症、痛みの原因になることが知られています。
当院ではそれらの異常血管(モヤモヤ血管)を減らすための新しい治療を行っています。
片手であれば5~10分ほどで終わる簡単な治療(動脈注射)で、一般的な治療よりも効果が期待できます。
動脈注射では、手首の脈を触れる血管(橈骨動脈)の中に、点滴で使う細い管を入れます。
その細い管のなかに薬を注入すると、血液の流れに乗って、手指の痛い部位に生じたモヤモヤ血管に作用し、
痛みを改善させることができます。
動脈注射を行う前の局所麻酔のみチクッとした痛みはありますが、それ以降に痛みを感じることはほとんどありません。
今までの治療で効果がない場合は、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

[参考文献]
(1) 藤澤幸三ほか:Heberden結節の自然経過・疫学、関節外科 30(8) 924-928, 2011.
(2) 藤澤幸三ほか:Heberden結節 一般人口中における発生頻度調査 日手会誌, 4:769-772,1987.
(3) Kellgren JH, Moor R: Generalized osteoarthritis and Heberden’s nodes. Br Med J, 1:181-187,1952.
(4) 吉野慎一ほか:へバーデン結節32症例の臨床的研究、リュウマチ 24:99-103, 1984.